不登校が長びくと、生徒が勇気をふりしぼって登校したのに、先生たちの中には「なんで来たんだろう」なんて、冷たく見られることも珍しくありません。
ある年の2月、欠席が3割を越えた高校2年生のノア(仮名)は、不安をのりこえ、学年末テストを受けるためにやってきました。しかし、教室に行く勇気がなく、保健室に直行。テストは特別教室で受けることになりました。
ぴのすけは、定期テストのたびに山盛りの仕事に追われ、3年生が家庭学習に入った2月に、ようやく人並みの仕事が回ってきます。
初めての、特別教室の試験監督です。
ノアとの初対面
その日、特別教室にいたのが、ノアでした。
そこらのアイドルもびっくりするほどの、笑顔のかわいらしい子でした。
僕はその学年のピンチヒッターで、1組の担任、ノアは2組。2組には物理がないので、ほとんどの子を知りません。10月の見学旅行にも全員一緒に行ったのに、話題にものぼらなかったので、やっぱり知りません。11月、友達関係をこじらせ、体調不良で休んでいる子のウワサがあったけれど、どんな子かさえ知らないままの、初対面でした。
僕の中の「すみっコどらごん(*50歳*子持ち男*ちょっとロリ)」は、あわてます。
心臓がバクバクいうのを止めるのにひと苦労でした。
「かわいい」+「弱気」=「恐竜のえじき」
こころの中で「復活の呪文(*必殺ロリ返し)」を唱える
学校の先生は大変なのです。
こんな子が「弱気」にしていたら、恐竜たちに食われる!
学校の先生など、大人のえじきにならない呪文
「この人はオヤジ、この人はオヤジ・・・」
(100回となえる)
相手も気が付き、自分も正気にもどります
僕は気を落ち着けて、その子にテスト用紙を配りました。
僕は「すみっコどらごん()」があばれださないように、いつもていねいな言葉を使います。
僕はすこし離れた机で、次の日のテストを、作ることにしました。
テスト中なのに、なぜか進路相談
始まって10分くらいで、えんぴつの音がとまります。
早い。
でも、授業に出ていないんだから、しかたがない。もうしばらくようすをみて、「復活の呪文」を教えてあげることに決めました。
僕は呼び捨てが苦手なため、苗字に「さん」をつけて呼びます。本名は書けないので「伊藤さん」(仮名)と言うことにしておきます
テスト中なのに、生徒に声をかける教師。
いやがらせはもう、受けてはいないみたいだった。
教室が、こわくなくなる、おまじない
なんだか未成年者を口説いてるエロおやじみたいになってきた。
彼女が、いちばん心配していることが、次の一言で分かった。
この答えにはYESしかありえない。YESって、なんていったら良いんだ?
ぴのすけの思わぬ爆弾発言
☆爆弾発言:空気を読めず、流れをぶちこわしちゃう発言のこと。
分かりやすい。われながら、感心した。ノアは納得して、もう一度答案に取り掛かった。
僕は、この子はもう心配ないなと安心して、次の日の試験作りに没入しました。
親からの通報!?
その日の夕方、ノアの家から、担任の先生に電話がありました。担任は、あわてて保健室に駆け込み、保健室の先生をつれて、僕のところにやってきました。
そういうことか。
すごい。そんな考えもあるんだなぁと感心してしまう。
二人の先生に、めっちゃ怒られた。
でもきっと、僕の考えに共感してくれる人の方が、多いにちがいない。
そう信じて、反論はしなかった。
職員会議がひらかれる
学校にはその学校で決めた「教務規定」というルールがあり、進級するためには、そのルールに合っているかどうかが判断されます。
進級するためには欠席が20%以内、入院などの特別な事情があるときは、職員会議による承認をえて、30%までの欠席を認める。
ノアは、30%を超えているので、職員会議では決められないのです。
しかし、たいていの学校の教務規定には、こんな一文があります。
基準を上回るものについては、学校長が判断する。
つまり、紙に書かれたルールより、校長先生の判断の方が上回るのです。
そんな校長先生に、自分たちの方針を分かってもらおうと、教務部の先生たちが、新しいルールを考えて、提案してくれました。
それは、欠席が30%を超えた分については、補習を行なったり、課題をださせたりして、補充してあげようというルールです。
ただし、校長先生は、どう判断するかは、分かりません。
校長先生の判断
職員会議の最後に、校長先生が決済を行います。
☆決済:正式にそうすると決めること。
つまり、ノアは進級できるよと言うことです。
ノアは結局、2年生の残りをほとんど休まずに登校しました。
補習や課題は春休みまでかかりましたが、みんなやり遂げて、なんとか3年生に進級できました。
勢いにのったノアは、さらに勢いにのる
ノアは、幼稚園の先生になりたいと言っていました。
しかし、学力に自信がない上に、3年間の欠席日数が60日を越えているので、入れてくれる学校があるか、不安です。
彼女は、自分の希望する短大に、指定校推薦の枠があることを知りました。
☆指定校推薦:ある大学に確実に入学できる権利を与えるため、指定したいくつかの高校に、決められた人数だけ推薦してもらう仕組み。
ただ、普通は、欠席が60日もあると、学校の推薦を受けることができません。
しかし、勢いにのったノアは、チャレンジしてみようと考えました。
担任からは叱られたけど、あきらめなかった。
進路の先生も、どうしたらいいんだ?って、こまってしまった。
職員会議にかけられ、賛成の意見も反対の意見もあり、決着がつかなかった。
学校長の決断に委ねられた。
僕は、校長先生の決断に、なみだが出ました。
子どもの気持ちを一番に考えるって、どういうこと?
「その子の気持ちを一番に考えたい」という気持ちは、大切なことだと思います。
僕は選択肢のたくさんある「多様化」された状況に大賛成です。
ほかの学校にうつったり、退学して放浪したり、いろんな生き方があっていいと思います。
結果として大成功をする人の話も聞いたことがあります。
だけど、これだけは、ゆずれない。
不安いっぱいで、選択肢の限られた子どもに、決断をせまるのは、ダメです。
ノアは、一度は、通信制の高校に行くと、決心した子でした。
「すみっコどらごん()」関数の使い方
ヒトの脳の中にいる「すみっコどらごん()」は、「関数」であることがわかっていますが、その全体像は、生命のナゾと同様、ナゾにつつまれています。
これまでに分かっている、すみっコどらごん()関数についておしらせします。
「すみっコどらごん(*50歳*子持ち男*ちょっとロリ)」
⇒子煩悩なお父さんだけど、本能が強いので注意してください。
「すみっコどらごん(*10歳*長女*イラストが大好き)」
⇒イラストばかり描いているので、お母さんに怒られないように、漢字も練習しよう。