ぴのすけには幼稚園の頃、あこがれていた女子がいた。それは、5つはなれた姉の友人レイコちゃん。ぼくをいじりたおす姉たちとはどこかちがう、育ちの良いレイコちゃんの、優しい目を忘れられない。高2の夏、久しぶりに家に来たレイコちゃんは、心臓が鼻から出るほどの美女になっていた。彼女は一瞬だけ微笑んで、ぼくの脳みそを丸焼きにしたあと、姉はぼくを居間からしめ出してしまう。ぼくはおとなしく外に出て、居間の窓の下に座り込みます。ぼくはそこで、レイコちゃんが「不倫」に巻き込まれたことを知ります。
☆東京ボンバーズ:大人気のローラーゲームのチーム。「bombers」は「爆弾野郎たち」という意味。発音は「バマーズ」だけど、迫力がないので昔は「ボンバーズ」って読みました。
☆いじりたおす:ちいさないじめをくりかえすこと。
☆不倫:結婚している男の人が、別の女の人と恋におちること。(男女逆のこともあります)
これが、レイコちゃんの過去だ
幼稚園の頃、ぼくの子守をしてくれたのは、二人のこわい姉とその一味たち。レイコちゃんは、そのたくさんの数知れない友だちのひとりでした。
ぼくは、お姉ちゃんたちの遊びのじゃまにならないように、自分で遊びを見つける、おとなしい子でした・・・。
☆一味:わるいなかまのこと。
姉たちとその一味は、小さいぼくを追い払うなど、邪険なあつかいをしました。ぼくの正確な記憶によれば、冬のスケートリンクでは、もっとひどいあつかいをうけています。
☆邪険:親切のはんたい。つめたくてきびしいこと。
大好きだった「ローラーゲーム」
当時、「ローラーゲーム」というスケート競技がテレビで放映されていて、大人気でした。
得点役の選手が敵を一人追い抜くごとに、1点ゲットできます。
ぼくは得点役の「小泉博」選手の大ファンで、彼が「ホイップ」という技で吹っ飛び、得点をかせいでいくのが、楽しみでした。
ダブルホイップ
小柄な小泉選手は「ダブルホイップ」をもらうと、大柄な外人選手のラリアットをかわして腕の下をくぐりぬけます。
いまも忘れられない「大技」があります。
あるとき敵は、後ろからくる小泉選手をくぐらせないように、低い姿勢で屈みこみました。その瞬間、小泉選手はその上をジャンプして飛び越えちゃったのです。きっと日本中の子どもたちが、いっせいに歓声をあげたにちがいありません。
幼稚園児ぴのすけ、レイコちゃんのホイップをくらう
ぴのすけ16歳の夏、不倫という言葉を知る
21歳になったレイコちゃんの物語
まだ21歳になったばかりのレイコちゃんは、仕事先で、20歳年上の上司に気に入られました。人々の脳みそのすみっコでは、今日もまた、全脳すみっコどらごん()会議が開かれます。
☆会議:わりと役に立つ結論もでることのある、ふつうの話し合いのこと。
☆会議:わりと役に立たない、決まった結論しかでない、かたちだけの会議。
☆routine(ルーティーン):日本語で「ルーチン」。ある決まった行動パターンのこと。「家に帰ると、手を洗ってうがいをするのがルーチン化している」みたいにつかう。
40男の全脳すみっこドラゴン()会議
ぴのすけが発見したところによると、すみっコどらごん()会議は中学校でならう「関数」みたいになっています。ここはみんな読み飛ばしちゃうと思うけど書いておきますよ。
わかりやすい例でせつめいしましょう。みなさんの脳みその中で行なわれる「すみっコどらごん()会議」には「ぺたぺタどらごん()」が主役の座で参加しています。
おいらは「さわってみな」という答えしか出さない関数おばけだよ。
()のなかに入れる値を「パラメータ」と呼び、いくつかあるので*をつけて区別します。
ぺたぺタどらごん(*0歳*へんなものをみつけた)
ぺたぺタどらごん(*40歳*いい女をみつけた)
みなさんが、なんでもかんでもさわらないのは、みなさんのなかにちゃんと「それはかっこ悪いよ」っていう「ストーリー」があるからです。でも男子に限ってみると、世の中には触ってみたいものが、あふれています。
さわってみたいなぁと心では思っても、本当にさわらなければ、ヘンタイじゃないですよ。
「ぺたぺタどらごん()関数おばけ」の影響が強すぎる人は「心の中のストーリー」を強化してください。
おれはヘンタイじゃない、おれはヘンタイじゃない。
レイコちゃんの上司に下った命令
ぴのすけの調査によると、レイコちゃんの上司の「すみっコどらごん()会議」の主役は「みたされナイどらごん()」でした。
ただの、こわれた桶みたいですけど。例を見てみましょう。
みたされナイどらごん(
*0歳*独身*自分が子ども*おなかがすいている
)
みたされナイどらごん(
*40歳*既婚*子持ち*かわいい子が自分の部下になった
)
こんな指令が、大脳辺縁系(大脳のすみっコのトカゲ脳)から直接、からだ全体に伝わります。トカゲのような生きものにとっては、こんな指令が人生のすべてをきめます。
しかし人間は、そんな恥ずかしい指令は破り捨てて、人間脳である大脳新皮質で、自分のストーリーを組み立てます。でも、自分のストーリーを組み立てるって、めんどくさい。
トカゲ脳の指令には、隠れみののような言葉があります。
「これはおれの運命」
この言葉にだまされて、一部の人間は、トカゲ脳のままに動き出しちゃうのです。
本当の運命は、過ぎたことだけ。何かが起こる前に、結果は決まらない。だけどトカゲ脳は、人をその通りに動かそうとします。
トカゲ脳の決めた運命の道は、トカゲにも歩ける。
しかし、大脳新皮質で作り出したストーリーは、人間にしか歩けません。
さいきん、学校の先生のエロ犯罪が多くなったのは、トカゲ脳が決めたニセ物の「運命」に、したがっちゃう人が後を絶たないためです。
おやじ上司が、20歳年下のレイコちゃんにメロメロになった理由も、トカゲ脳の決めた「運命」を信じたためです。自分の道は、自分でストーリーつくらないと、ただのヘンタイになっちゃうんです。
しかし、レイコちゃんも、おやじ上司にメロメロになってしまいます。
ぼくは、この理由が長い間、ナゾでした。
斎藤一人さんの「ヘナモン」説
ひとりさんによれば、人が人を好きになってしまうとき、脳のなかで、あるホルモンが分泌されます。
そのホルモンのことを、ひとりさんは「ヘナモン」と名づけました。
斎藤一人さんの「ヘナモン」のお話をべつのページでひらきます。
脳の中で「ヘナモン」が分泌されたレイコちゃんは、上司がとても、素敵な人に見えてしまいます。
世界でいちばん、ツマらない4コマまんが
レイコちゃんに「ヘナモン」が分泌される
すみっコどらごん()会議にしたがうのは、デメリットしかない
レイコちゃんは結局、姉の説得を聞かず、20歳年上の上司に、一生を捧げる選択をしました。
いつも不機嫌な男の機嫌をとりつづける道を選んだのです。もとの奥さんとは、莫大な慰謝料を払いつづけることで、離婚が成立します。
ぼくがなにか口を出すチャンスはなかったので、祈るしかありません。
もとの奥さんとその子どもたちが、幸せに暮らせますように。
レイコちゃんと、そのだんなさんも、なんとか幸せに暮らせますように。
●人間に、決められた運命は、ない。
●人間は、トカゲ脳の決断を運命と錯覚してしまう。
●トカゲ脳のきめた運命の先に、人間としての自由や幸せは、望めない。
●自分のストーリーを、トカゲに任せるな。