学校は子どものアレルギーに責任を負う最前線の現場です。子どもたちの1割~2割は何かのアレルギーを持っているので、アナフィラキシーショックなどで死人を出さないための体制を整えているんですよ。
重症な子のための「エピペン(アドレナリン注射剤)」のある場所は、たとえ行事で場所の移動があても、だれもが把握していなくてはなりません。宿泊研修や見学旅行の食事の計画も、その半分はアレルギー対策です。
「見学旅行説明会」ではアレルギー食の説明にも重点がおかれ、終了後には心配する保護者さんたちに囲まれますが、だいたいアレルギーのお子さんをお持ちです。ぼくは、取り囲む保護者さんたちを、大爆笑で安心して帰ってもらいました。
どうしたって避けられないことなのに、保護者が悲観してどうするのってことでした。同僚の女の先生から「やっぱ学年主任は神だわ。また今度もお願いします。」なんていわれました。違うんです。ぼくは本心から、アレルギー食はおいしそうって思うんです。ぼくはカップ麺アレルギーでいまも後遺症がありますが、カップ麺のアレルギー食があるなら、また一週間食べ続けたいです。
見学旅行については、ちがう機会に書きます。今回は、アナフィラキシーショックを起こす怖ろしい「即時型アレルギー」について、ぼくが昔、調べてたことをかきます。
ヒヨコは花粉でくしゃみをするか?
アレルギーを起こしやすい、花粉や、そばや、小麦、花粉、ネコの毛、チリダニのふんなどなどは、ヒトのB細胞の作り出す「免疫グロブリン」が関わっています。
ヒトの免疫グロブリンには次の5つがあるので、この世に登場した時代の古い順にまとめてみます。
5つの免疫グロブリン
IgM(軟骨魚類よりあとの脊椎動物がもっている)
・分子量90万のいちばん大きな5量体の抗体。
・感染性の微生物を抗原として、少量だけ生産される。
・凝集力、感染防御力がもっとも強い。
・ヒトのABO式血液型の指標になっている。
・ヒトどうしの、血液型のちがいを見分けてしまう。
IgD(軟骨魚よりあとの鳥類以外の脊椎動物がもっている)
・分子量17万の2番目に小さな1量体(単量体)の抗体。
・B細胞の表面にあり、詳しい仕事は分かっていない。
・病原菌以外の侵入物を抗原とすることは分かっている。
IgG(両生類、鳥類、哺乳類がもっている)
・分子量15万のいちばん小さな1量体の抗体。
・いちばんたくさん作られ、ヒトの抗体の70%を占める。
・細菌・ウイルス・微生物の出す毒素などを抗原とする。
・凝集力はIgMの次につよい。
・胎盤を通過でき、新生児の感染を防ぐ。
IgA(鳥類、哺乳類だけがもっている)
・分子量17万の1量体と分子量39万の2量体がある。
・細菌・ウイルスを抗原とする。
・唾液、涙、鼻水、汗、初乳などの外分泌液に含まれる。
・ケガのときなどの感染に役立つ。
IgE(哺乳類だけがもっている)
・分子量19万のわりと大きな1量体の抗体。
・作られる数はいちばん少ない。(よかった)
・病原菌やウイルス以外の有害な侵入物を抗原とする。
・からだに侵入した寄生虫をやっつけてしまう。
・アレルギーの原因になっている。
ヒトのアレルギーに関係しているのが最後にあげたIgE抗体ですが、ヒヨコはもっていません。ヒヨコがもっているのはIgM、IgG、IgAの3種類。このうち細菌でもウイルスでもない、微生物などの出す毒素に反応するのはIgGだけです。
さて、ヒヨコのもつ免疫グロブリンIgGが、花粉を見分けるポイントは?
花粉に、毒はあるのか?
この1点にかかっています。
自然界にある毒素
植物性:そば(ファゴピリン)、ジャガイモの芽(ソラニン)、青梅(アミグダリン)、生の豆(レクチン)、イボテングタケ(イボテン酸)、トリカブト(アコニチン)
動物性:フグ(テトロドトキシン)、スズメバチ(ヒスタミン・セロトニンなどの混合物)、ハブ(ペプシンなどのタンパク質分解酵素)、鮮度の落ちた魚(ヒスタミン)・・・
カビ性:アフラトキシンなど
上に挙げた毒素はすべて「アルカロイド」や「アミン」などに属する物質で、花粉には含まれていないみたいです。
アレルギーをもつ人が反応する「花粉」「ダニのフン」「ネコの毛」の共通点
花粉は、雌しべに達したあと、中に入り込むための酵素が含まれています。
ダニのフンは、消化されたものなので、消化酵素が残っています。
ペットの犬や猫は、子どもをよくぺろぺろなめていますよね。唾液で洗っているんです。
たんぱく質の分解酵素を含んでいたり、付着したりしているんです。
「花粉」「ダニのフン」「ネコの毛」はそれぞれまったく違うように見えて、共通点がちゃんとあるんですね。
花粉に毒性はある?
☆エグい:たとえばタンポポの茎は、苦くてアクがつよく「べっ」と吐き出したくなるような味があり、そういうのを「えぐ味」という。それと同じように、きっつい感じの言い方を「エグい」という。
花粉は小さくて、動物は食べたりしないので、毒性をもつ必要がありません。
ダニやシラミも、動物となかよく一緒にいたいので、毒をもっていません。
ヒヨコのIgGが反応するための毒素は、花粉にはないのです。