ピノすけ
遠くに住んでいるぴなちゃんから、メールがきました。
みまもりケータイ
この曲を探してください。
『さわがしい日に笑えなくなっていた。
ぼくの目に映る君はきれいだ。明けた夜に・・・。』
ピノすけ
このフレーズをコピーして、そのまま検索したら、でてきましたよ
ピノすけ
ぴなちゃんのお母さんがiPadを隠してしまう事件があり、このYouTubeを見たのは、お盆のころでした。
ピノすけ
ははは、ぴなちゃんがたいへんだった時間に、聞いてみたよ。
ピノすけ
とってもリズムの良い曲で、歌詞の内容も、心に染みるよね。いろんな意味で。
ピノすけ
うん、歌詞の中にはまったく出てこないんだけど、この男の子と女の子、最後にどうなっちゃうか知ってる?
ピノすけ
めがね舐めちゃってるよ。
ってこれ、ぴなちゃんのインタビューじゃん。
『夜に駆ける』は、どこを駆ける?
ピノすけ
この歌のもとになったという短編小説があるんだ。
ピノすけ
でも「15歳未満禁止」らしい。
ピノすけ
15歳以上でエロがOKなら、高校生がみんな喜んじゃうよ。エロじゃないの。グロいの。
ぴな
グロいの大丈夫。いまどきの子どもは『鬼滅の刃』で鍛え上がってるから。
ピノすけ
それじゃ「つよいこ方式童話の書き方」みたいに解説をつけてお伝えすることにします。
おなじみ「童話のかきかた」つよいこ方式
つよいどうわのようそ
ピノすけ
お待たせしました。大ヒット曲『夜に駆ける』のもとになった物語の解説です!
『タナトスの誘惑』星野舞夜さん
「モノコン2019」ソニーミュージック賞
お題:夏の夜、君と僕の焦燥
ぴな
文字の数は、1876文字で、原稿用紙5枚に、だいたいびっしりです。
1.構成力(こうせいりょく)
ピノすけ
賞をもらっている作品なので、
『A(すごいね!)』で間違いないです。
はじめ
●主人公の男の子が、女の子から「さよなら」のLINEをもらう。
●いつもの場所まで、あわてて走っていく。
なか
●マンションの屋上。フェンスの外側に、女の子を見つける。
●最近同じマンションに引っ越してきた子で、男の子は一目ぼれしてしまった。
●彼女は屋上に来るたびに、僕に連絡をして、待っていた。
●「死神さんが呼んでいるから」死にたいという。
●「もう嫌なの」「もう疲れたのよ」「はやく死にたいの」という言葉に調子を合わせているうちに、「僕も死にたいよ!!」と言ってしまう。
むすび
●彼女はニッコリと笑い、「やっと気付いてくれた?」とたずねる。
●僕を一緒につれて行きたかったからだと気付く。
●そのまま二人は手をつないで、夜に向かって駆け出す。
ピノすけ
そうだね。ぴなちゃんたち子どもの心配が増えないように『15禁』って書かれているの。
心配を抱え込んじゃう子どもたちの話
ピノすけ
令和元年度の、子どもの死亡原因を円グラフにしてみました。数字は去年1年間の人数です。
5歳ごとの死亡原因(政府統計ポータルサイトより)
ぴな
10歳から自殺が出はじめて、15歳からは死因のトップなんですね。しかも、ぶっちぎり。
ピノすけ
2018年からの2年間の月ごとの人数をグラフで追っかけてみました。
5歳ごとの人口と小中高校生・青年世代の自殺者数(政府統計ポータルサイトより)
ぴな
中学生の自殺者が1ヶ月に最大15人くらいでてるってことですね。
ピノすけ
小学生も含めて高校生くらいまでの子どもが、だいたい1日に1人か2人ずつ、自殺してしまっていることを表しています。
ぴな
2年まえと比べると子どもの数が減っているのに、自殺者数はぜんぜん減っていないんですね。
ピノすけ
大人を含めた全体の自殺者の推移もグラフにしてみました。
自殺者数の変化と社会的な要素(政府統計ポータルサイトより)
ピノすけ
オリンピックが近づくと、自殺者数がこの数年間は失業率が減っているので、全体の自殺者数も一気に減少しています。
ぴな
それでも、子どもたちの自殺が止まらないのはどうしてかな?
ピノすけ
ひとことで言うと、大人が不安を作り出してしまっているからなんだ。
2.情報量(じょうほうりょう)
●彼女からの「さよなら」の一言で、すべてが分かった。 ⇒ どきどきB
●仕事を切り上げてマンションに向かう。 ⇒ どきどきB
●見上げると、マンションの屋上に彼女が見えた。 ⇒ どきどきB
●これで4回目。 ⇒ どきどきB
●世の中には「エロス」に支配される人間と、「タナトス」に支配される人間の2種類がいる⇒ どきどきB
●つぶらな瞳にぽってりした唇と、可愛らしい顔立ち。 ⇒ わくわくA
●どこか儚げな表情をしている彼女は、一瞬で僕の心を奪った。 ⇒ どきどきB
●ブラック会社に勤めながら独りきりで寂しく暮らしていた僕にとって、天から舞い降りた天使のようだった。 ⇒ わくわくA
●助けて欲しいと思っていると勝手に信じていた。 ⇒ どきどきB
●だから今回も、マンションの階段を駆け上がる。 ⇒ どきどきB
●僕が死神を否定すると、彼女は決まって泣き叫ぶ。 ⇒ どきどきB
●死神は、それを見る人にとって1番魅力的に感じる姿をしているらしい。 ⇒ どきどきB
●彼女は死神を見つめているとき、まるで恋をしているよう。僕はその表情が嫌いだった。 ⇒ どきどきB
●「死神なんか見ていないで、僕のことを見て」僕は君のことを愛しているのに、君は僕だけを見てはくれない。 ⇒ どきどきB
●死神に嫉妬するなんて馬鹿げているけど、どうでもよかった。 ⇒ どきどきB
●僕もいやだよ。僕も疲れたよ。相づちを打っているうちに「僕も死にたいよ!!」と言ってしまう。 ⇒ どきどきB
●その時、彼女が顔を上げた。ニッコリと笑っていた。 ⇒ わくわくA
●彼女の笑顔を見たとたん、急に心のどす黒いものが消える感覚がした。 ⇒ わくわくA
●「やっと・・・気付いてくれた?」「ああ・・・やっとわかったよ」 ⇒ わくわくA
●この世界が僕らにもたらす焦燥から逃れるように夜空に向かって駆け出した。 ⇒ どきどきC
ぴな
どきどきBが14コ、わくわくAが5コ。Bがぜんぶどきどきなのはなぜじゃ?
ピノすけ
夢を抑えこむような「どきどき」のところが、夢のある「わくわく」のところを際立たせているんだ。
ぴな
そうか。
ときどき「どきどき」になるんだった。
「夜空に向かって駆け出した。」って夢のある言葉なのに、どきどきCなのは、このままじゃ夢が広がらないからだね。
3.文法(ぶんぽう)
「さよなら」
たった4文字の彼女からのLINE。
それが何を意味しているのか、僕にはすぐに分かった。
御盆の時期にも関わらず職場で仕事をしていた僕は、帰り支度をしたあと急いで自宅のあるマンションに向かった。
そして、マンションの屋上、フェンスの外側に、虚ろな目をした彼女が立っているのを見つけた。
ピノすけ
とっても印象的な書き方なので、そのまま曲の中に採用されています。歌える?
ぴな
♪「さよなら」だけだった
♪その一言で全てが分かった
♪日が沈み出した空と君の姿
♪フェンス越しに重なっていた
ピノすけ
うーん、ケンカはしていないみたいだけど。つぎがその仲直りの場面です。
「もう嫌なの」
僕も嫌だよ。
「もう疲れたのよ」
僕も疲れたよ。
「はやく死にたいの」
「僕も死にたいよ!!」
その時、彼女が顔を上げた。
ニッコリと笑っていた。
彼女の笑顔を見た途端、急に心のどす黒いものが消える感覚がした。
ぴな
歌詞では「終わりにしたい」になっているけど、もとのお話は「死にたい」なのね。
ピノすけ
もとの作品を大事にしながら、「自殺」につながらないように再編してるんだ。
ぴな
口げんかみたいなことば遊びの最後で、彼女はニッコリ笑うところが、かわいい感じ。
ピノすけ
リズミカルな『言葉遊び』が、星野舞夜さんの特徴ある文法だなぁと思います。
ぴな
♪ほらまたチックタックと
♪鳴る世界で何度だってさ
♪君の為に用意した言葉どれも届かない
♪「終わりにしたい」だなんてさ
♪釣られて言葉にした時
♪君は初めて笑った
4.読後感(どくごかん)
ピノすけ
賞をもらっている作品だけど『B(ふつうだね)』です。
ピノすけ
読み終わって、多くの人が感じるのは『閉塞感』だと思うんだ。
★閉塞感とは・・・がんばってもがんばっても、不安がなくならず、苦しんでいる感じ。
ピノすけ
ははは。『すいぞく館』みたいだね。きっとそこには、死神とか人食い鬼がウヨウヨいる。
ピノすけ
このお話に出てくる『死神』は生け贄を欲しがっている悪い神さま。日本で言うと『悪霊』だ。
ぴな
そういう神さまの出てくる 多神教を禁止している宗教がありますね。
ピノすけ
日本は平和を愛する天皇を頭領とした鉄壁の国だったので『悪い神さま』が登場する発想がなくて、昔からの多神教がそのまま残っています。
ぴな
要らない土をわきに盛り上げて、みんなが広い水田を作れるようにしたんだよね。
君は、僕を連れて行きたかったんだ。
僕にとっての「死神さん」は、彼女だった。
涼しい風が吹き抜ける。いつの間にか蒸し暑さなど感じなくなっていた。
「じゃあ、行きましょうか」
「ああ、行こうか」
手を繋いだ君と僕。
この世界が僕らにもたらす焦燥から逃れるように
夜空に向かって駆け出した。
★焦燥:あわただしい、せわしないこと
ぴな
♪忘れてしまいたくて閉じ込めた日々に
♪差し伸べてくれた君の手を取る
♪涼しい風が空を泳ぐように今吹き抜けていく
♪繋いだ手を離さないでよ
♪二人今、夜に駆け出していく
『夜に駆ける』んなら、どこがいい?
ピノすけ
そうそう。結局この二人は、人食い鬼に食べられちゃうんだ。
ぴな
うわー。そんな歌ダメじゃん!
(ぴなちゃん本人の言葉です)
ピノすけ
寂しく死なないための、自殺マニュアルになっちゃってる。
ぴな
つまり自殺したい女の子が、助けにいった男の子を生け贄にしちゃうっていう歌だったのね。
(ぴなちゃん本気で怒っています!)
「夜空に向かって駆け出した」に隠された日本的な心
ピノすけ
僕が『日本一正直な霊能者』と称えている、ある有名な実業家さんが、こんなことを言っています。
ひとりさんの「地獄のお話」
あと70年の寿命のある人が自殺をしてしまうと、その70年の間は何の情報もなく、何の成長もなく、ただ暗くて寒いだけの、地獄に閉じ込められてしまうんだよ。
ぴな
これは斎藤一人さんのことね。ひとりさんの言う通りだわ。
ピノすけ
作者の星野舞夜さんが「夜空に向かって駆け出した」という言葉を選んだのには、日本で育った以上避けられない運命的な理由があります。
ピノすけ
その通り。いいね。ずばりそのものを書かずに、別の言葉で表して連想させるんだよ。
ピノすけ
そうだよ。和歌の解釈は、ひと通りには縛れないものだからね。
ぴな
それじゃ安心だわ。原作は歌よりもっと夢があるほうがいいもん。
ぴな
その他には・・・姫路城で食べたチゲ鍋が美味しかったよ。
ピノすけ
姫路城でチゲ鍋って・・・ああ、近くの料理店ね。やっぱり食べ物が大事なんだね。
ピノすけ
それじゃ、どこに駆け出せば良いか、みなさんから意見をいただいて、星野舞夜さんにリクエストしましょう。
ピノすけ
この下のところにコメント欄があるので、そこに書きこんでもらえばいい。
ぴな
わーい。まってます。良いところとか、もっと良い方法があったら教えてください。